新型CB1100に乗る RSは超カッコいい 2017年

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CB1100のコンセプトは「昔のバイク」で、30年以上前の、日本でバイク人気があった頃のデザインを踏襲している。おもしろいことに新型はそのキャラクターをさらに強めてきた。ノーマル、EX、RSと3タイプもあるが、EXとRSのタンクにはウイングマークでなくHONDAとある。昔のホンダとヤマハとスズキのバイクにロゴはなく名前だけだった。最近ではヤマハが創業60周年記念モデルでそれをやっていたが、ホンダのロードバイクではVTRなどのごく一部だけだったので珍しい。他にもウインカーやテールライトの形状など、デザインの細部に渡ってレトロ感を出している。ちなみにノーマルのデザインは、先代とあまり変わっていない。

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エンジンは引き続き、空冷である。排ガス規制の強化を機に空冷エンジンは消えていき、今やほとんどが水冷となったが、空冷の特徴のひとつはエンジンの美しさ。燃焼効率などの性能で水冷に勝てないが、空冷特有のエンジンフィールなどに魅力を感じるファンは、年配者を中心に存在する。

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リッタークラスでネイキッドモデルのホンダの主力はCB1300である。CB1300に乗ったことあるが、低回転域から太いトルクがあり、かなり速い。スズキはバンディットを去年に、カワサキはZRXを最近になって生産中止にした。海外でこのカテゴリーの需要があるのか知らないが、ZRXは国内専売だったのでないのかもしれない。少なくとも日本市場だけでみれば、作っても採算はとれない。日本ではバイクが売れないので、年に1000台売れればヒットというとんでもない状況に陥っている。6月にヤマハのHPを見ると、XJR1300も生産中止になっていた。HPのラインナップに載っていないが、おそらくXJR1300Cは逆輸入車で、こちらは今でも売っていると思うが、したがってリッタークラスのネイキッドモデルはカワサキ、スズキが撤退し、ヤマハもXJRの次期型は開発していないだろう。となるとこのクラスはホンダの独壇場である。他メーカーが撤退したクラスにホンダは2車種もラインナップしており、さらにエンジンを水冷と空冷の2つを用意しキャラクターを分けてある。

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ということを頭に入れながらRSの実車をみると、むちゃくちゃカッコいい。古いバイクのデザインをベースにしながらも、最新のバイクの雰囲気もきちんと出している。非常にレベルの高いデザインだ。さすがはホンダやなと感心するし、CB1100のデザインはおじさんライダーの心を掴むだろう、なんといっても唯一無二の存在だ。

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座ってみると、シートの出来に感動した。これほどクッション性のよいシートのバイクは初めてである。アイドリング音は、さすがに1100ccもある大排気量エンジンなので、いいサウンドだ。走ってみると、意外にも水冷エンジンの印象とほとんど変わらない。言われなければ、空冷エンジンだとは気づかないだろう。排ガス規制のクリアや、燃費向上を優先した結果、空冷の味が薄まったのやと思う。それは残念やが、しかたない。エンジンの最高出力は90PS、トルクは9,3kgmもある。

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実際に走ってもっとも驚いたのは、エンジンに個性がないこと。単調に回転数が上がると同時にスピードも上がり、刺激をまったく感じない。あえて個性を殺したのではないかとすら思った。レッドゾーンまで回せば速いのだろうが、スポーツエンジンのような加速はない。たとえば私のGSR750は6000回転を超えると狂暴な加速をするが、両者のエンジンの性格はまったくちがう。つまりCB1100は、基本はゆっくり走り、スピードを出そうと思えば大排気量なのでそれなりに速くは走れるというバイクなのだろう。飛ばす走りはしないがパワーの余裕は欲しい人を購買の対象者にしている。他を知らないので予想になるが、CB1100がではなく、大排気量の空冷エンジンはみな、こういうものなのかもしれない。エンジン以外では、価格が100万円を超えるので倒立フォークやと思っていたら正立である。やはり飛ばすバイク、性能を追求するバイクではないわけだ。年配ライダーの事故死の多さが多少、社会問題になっているが、体力や運動神経が衰えているのに、お金はあるから高価なスポーツバイクに乗り、結果、事故を起こすケースがある。技量と体力に自信がなければ、CB1100のようなジェントルなバイクがよい。車重は252㎏とけっこう重い。

ちなみにこのクラスで個性あるエンジンに乗りたいと思うなら、CB1100より20万円ほど高くなるがCB1300をすすめておく。CB1300のエンジンはスポーツエンジンではないが速いし愉しい。

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疑問を感じたのは価格で、税抜きでノーマルが1.067.000円、EXが1.239.000円、RSが1.276.000円である。RSの価格なら、CB1300と同じで、スズキのGSX-S1000より高い。私なら迷わずCB1300、GSX‐S1000を選ぶ。ノーマルよりRSのほうが断然カッコいいけれど、20万円もの価格差を考えればノーマルを選んだ方がよい。CB1100は130万円を出してまで買うモデルではない。

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残念ながらCB1100の走っている姿を見かけることはほぼない。ツーリング先でもほとんど見かけないなぁ。あまり売れなかったのかもしれない。しかしホンダはカワサキ、スズキのようにCB1100を絶版にする選択肢もあっただろうに、新型を出し、かつ3モデルも用意してきた。最近フルモデルチェンジしたワゴンRも3モデルあるが、バイクでそれは珍しい。この空冷エンジンは他車種には使わないだろうから、CBのためだけに開発された贅沢なエンジンである。若い人はバリバリ走りたいのでCB1100は買わないけど、飛ばすのを卒業したベテランライダーにはうってつけのバイクになるだろう。ホンダも彼らをターゲットにしてCB1100を作ってあるので、お金に余裕ある50代以上のライダーは、CBをどんどん買ってほしいと思う。

 

7月11日に、東名から首都高渋谷線に入り走っていると、逆の下りで赤いバイクが走ってきた。あれは新型のCB1100ではないか?とすぐに思い、近づいたときにそれだと確認できた。私が乗ったのと同じ、赤のRSである。CB1100には華があり、かなり目立つ。前述のとおりRSは価格が高すぎるが、デザインは素晴らしいと思う。