GSR750と伊豆ツーリング② 1日目

ふだんなら小田原厚木道路を通って伊豆半島に入るが、今回はそのまま東名を走り、御殿場ICで降りる。富士山周辺を走る予定を立てていた。けれども富士山には雲がかかっている。どうせ走るなら綺麗に眺めたいところ。散歩してる人に聞くと、数時間経てばわからないが、今日は雲で見えないかもしれないね、と言われた。富士山を走りたかったので悩んだが、今回は諦めることにした。ということで伊豆半島に向かう。まずは伊豆の国の一宮である三嶋大社に行く。三嶋大社を訪れるのは3年ぶりぐらいだ。そこから南下し、次は修善寺へ。

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修善寺の前に足湯があり、利用してみた。そこにはおばちゃん2人もいて、彼女達と話すと東京から来たという。ツアーで新宿からバスでここまで来たとのこと。私はバイクですというと、すごく羨ましがられた。それはそうで、ツアーは予定が決まっているが、バイクならそれはすべて自分で決められる。足湯をあがってバイクに戻るとちょうどおばちゃん達と一緒になり、これがお兄ちゃんのバイクね~となり、「私も運転できるものなら、こんなバイクで走ってみたいわよ」と言いながらタンクをベタベタ触られてこちらは苦笑した。

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修善寺を西に5㎞ほど走ると舗装された林道がある。前回その道に行ってないので走ってみると、道の脇に雪がある(今は12月)。あれれ?とは思ったが、これはもう性格だからしかたない、そこで引き返せばよいのに先へ進む。するとなんと、気づけば自分が氷の上にいる。私はパニック状態に陥った。なんで自分がこんな状況になっているのかわからない。どうしていいかわからんが、確実にいえるのは自分で解決しなければならないということ。なんでこんなことになってしまったのか、後悔の念ばかりが頭に浮かぶ。分析すると、まずは凍った状態に気づかずに走り、滑って崖に落ちるという最悪な状況は回避できた。今しなければならないのは、バイクを押して向きを変え、今来た道を引き返すことだ。問題はそれができるかどうか。もしバイクを倒してしまったらこれも最悪で、道が凍ってるのやからバイクを起こすのは不可能だ。そしてJAFか何かを呼ぶことになるだろうが、こんな山道に着くのは時間がかかる。今は15時ぐらいで、17時には暗くなる。かなりヤバいことになっている。

バイクに乗った状態で、足で道路を蹴ったりして確認すると、なんとか立ってはいられる。ゆっくりなら歩行は可能みたいだ。バイクを直立の状態に保ちながら慎重にバイクから降りる。バイクをまっすぐにしたままで足に神経を集中させてゆっくりゆっくりと向きを変える。たぶん、バイクが傾くとどこかの時点で滑って倒れるだろう。バイクの向きを変え、氷から抜け出す。スタンドを出してバイクを停めた時点でどっと疲れが出た。一体これは何だったのか…。なぜ自分がこんな目に遭ってるのかわからない状況ながら、とりあえずは危機は回避された。まずは一刻も早くこの呪われた道路から離れたい。西伊豆スカイラインに行く道に出たが、ここも凍ってるんじゃないか…と疑心暗鬼になっているので、修善寺に出る元の道に戻る。さっきの悪夢は何だったのか…。このあたりは山道なので、どこが凍ってるのか、それとも凍ってないのかがわからない。いや、すべての道が凍ってるんじゃないかとすら思った。しかし今しなければならないのは、明るいうちに宿の近くまで走ることで、暗くなったら路面状況の判断がつかずに危険だ。天城街道を走ることになるが、天城街道に入ってガソリンを入れ、店員にこの道は凍ってないかを聞く。「夜は凍るが、今なら大丈夫でしょう」。人間不信にもなってるので信用できないが、走るしか選択肢がない。ガソリンを入れたのが16時10分で、河津まで30㎞ほどやから、真っ暗になる頃には着くだろう。「路面凍結 注意」の電光掲示板を目にするたびに心拍数が上がり、本来は天城街道は愉しい道なのやが、まったく愉しむことなくカーブに常にビビりながら走る。無事に天城街道を抜け、前回に泊まった東伊豆町稲取にあるFuji ライダーハウスへ。管理人の95歳になるおばあちゃんが元気にいたのでうれしかった。12月なので伊豆にツーリングに来る人は少ないのだろう、客は私ひとり。酒飲みながら、あの凍った道は一体何だったのか…、こればかりが頭に浮かぶ。後でわかったが、山の中なので温暖な伊豆とはいえ、冬は気温が下がる。結果、路面が凍り、交通量はほぼ0で、周りの木々で太陽が当たらずに凍ったままになるのだった。天城街道は夜中は凍る箇所もあるが、交通量があるので冬でも日中は溶ける。バカでなければ、冬の山道のツーリングは、交通量が少ない道は走ってはいけないと知っているだろう。しかし私はそんなこと知らない。最悪、死ぬところだった。氷の上でバイクを止めたときは、今年一番緊張した時間になった。ハプニングもツーリングの醍醐味のひとつやが、あんな思いは二度としたくない。本当に怖かった。一体何だったんだ…。

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 魔の道への入り口

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 氷から脱出したところ

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 バカはこうなってても先へ進んだ

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 危機を回避し、なんと素晴らしい景色なのだろう