横浜で新型セレナに試乗する プロパイロットは素晴らしい

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8月24日に発売されたセレナに、横浜の日産本社で試乗してきた。

日産は日本市場に力を入れていないため、販売が苦戦しているが、そのなかで唯一気を吐いていたモデルがセレナである。開発責任者がまともな人だったのだろう、きちんと改良を重ねて結果、モデル末期でもコンスタントに売れていた。日産にとって大事なモデルなので、新型は本気で開発してきた。そうでないと、ライバルは3兄弟やから勝てないだろう。3つも作るなんて、マークII以来でないか。

そして去年は新型車がゼロというありえない状況下だったので、販売店のセレナに対する期待の大きさを想像するのは難しくない。目玉はプロパイロットと日産が名付けた自動運転の初期技術である。これを客に試してもらうため、本社で行う試乗コースが首都高である。ここまで気合入れてるとは思わなかった。

まずはデザイン。いくら性能がよかろうが、カッコ悪ければだめだ。そのよい例がステップワゴンで、超ダサいせいで売れてない。それは当然で、250万円以上だしてカッコ悪いクルマを買うわけない。その点セレナはカッコいいし、かつ好き嫌いがわかれるデザインでもない。よって大成功やと言っていい。新型もたくさん売れるだろう。

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 エルグランドがコケてるので、兄のぶんも稼がなければならない

 

まずは市内を走る。横浜をクルマで走るのは久しぶりなので嬉しい。天気もよく、ドライブに最高の日である。

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 真ん中のビル奥にランドマークタワーがあるが、すっぽり隠れてる

 

首都高横羽線のみなとみらいから高速に乗る。プロパイロット(以降プロ)の起動ボタンを押すと、カメラが車線を認識し、10秒以内に起動する。ハンドルが自分で動く。初めての経験なので、感動した。速度をセットすると、その速度で走ってくれるし、前方車に付いていくし、それが速度を落とすとセレナも落とす、それがいなくなれば設定速度まで加速する。素晴らしいとしか言えない。手離しでもしてくれるが、すこし経つと確認ランプが着き、アラームが鳴る。それでも手が離れたままなら解除される。今回は試せなかったが、渋滞時にはクルマが自分で走ってくれる。運転手は、ハンドルに触れておくだけでいい。

プロができないのは、ある程度の速度が出た状況での急カーブの運転である。これはまだ曲がれないので、運転手がハンドル切らなければならない。そして車線変更もできない。変更後は、プロが改めて起動する。また、車線が変な形になってると、コンピュータの認識が迷うときがある。よってまだまだ発展途上の技術であるが、最高におもしろいし、なにより夢がある。15万円ほど高くなるが、新しい技術におもしろさを感じるのなら価値あるだろう。便利さを求めるなら微妙だ、なぜならプロを起動させても運転手も常に道路状況を把握してないといけないからだ。人はシートに座ってるだけ、は当分先の未来だろう。あるいは無理かもしれない、コンピュータのトラブルで、自動運転時に人を撥ねて殺した際に、誰が責任をとるのか、という問題がのこる。

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  ハンドルが軽すぎる。先代マーチを思い出した

 

日産は15年以上前のシーマで、世界初のレーンキープサポートシステムを世に問うた。たしか30万円やったと思う。国交省が自動運転を嫌っていちゃもんをつけたため、技術の進歩が遅れた。これに関してもこの国の政府のだめさが顔を出す。セレナのプロは、それの後継だろう。

興味深いのは、運転中に私はしばしば、おもしろい!と口に出したのやが、日産の人は「便利でしょう?」とその都度返答してきた。自動運転技術の評価は2つある。「おもしろい」と「便利」である。運転が好きな人や、新しい技術が好きな人、遊び心がある人は前者の評価をし、クルマをたんなる移動の道具と考える人は後者の評価をする。私にとっては便利など二の次で、なによりプロが楽しいのが素晴らしいと感じる。未来の技術の萌芽に、ワクワクするのだ。

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 セレナ自体の評価はわかれる。まずは、完成度の高いクルマだ。が、運転してまったく楽しくない。これはこのクラスのクルマに共通してる。買う人は運転の楽しさなど求めてないのだ。だったら86とか買えよということだろう、ちょうど価格も一緒だ。幅が狭く背が高いので、コーナーを曲がっても気持ちよくない。エンジンに何らの個性がない。このクラスは実用性を追求したクルマで、ドライビングを愉しむものではないと割り切る必要がある。機械としてみれば、よくできてる。ただ私は、クルマの運転も、有限の人生のなかで大切な時間だと考える。

新型セレナは相当に気合入れて開発したモデルであり、会社としてもたくさん売りたいので、本社での試乗はかなり力が入っていた。よい体験をさせていただき、日産に感謝です。ノア3兄弟にセレナ1車種で販売台数で勝つのも可能やと思う。それは販売店の売り方次第だろう。クルマの魅力度では勝ってる。ステップワゴンは自分で勝手に転んでもがいているので、日産とトヨタの戦いである。日産にはプロパイロットの技術を大切に育てていってもらいたい。この分野で、ベンツに勝てたら素晴らしい。

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