バイクの購入交渉

f:id:suzaku-umenoya:20161230001820j:plain

GSR250を購入しバイクライフを楽しんでいると、バイクがより好きになっていき、いろいろと調べるようになった。バイクを「大好き」でなく「好き」なら、250㏄に乗るのが正しい。100㎞/hはすぐに出るし、120㎞/h程度なら問題なく走ってくれる。フル加速すればじゅうぶん速い。価格は45~55万円ほどで、維持費は安い。GSRは11000㎞走り、整備費はオイル交換とチェーン調整1回のみ。大型バイクならタイヤは10000㎞ももたないし、タイヤ自体もサイズが大きいのでより高価になる。したがってふつうの人は250に乗るのが正解で、実際にそうしているし、ホンダ以外の日本メーカーは魅力あるモデルを用意している。しかしながら考えねばならないのは、バイク好きにとっての正解は何か、である。バイク好きは大型バイクに乗る。私はバイク乗りやバイク屋の人5人ぐらいに、「なんでこれ(250)に乗ってるの?」と言われた。彼らにとって250に乗るのはありえない選択だ。クルマでいえば「そんなにクルマが好きなのに、なんでフィットに乗ってるの?」といった感じ。なぜ86とかに乗らないのか、と。この考えは正しい。バイクをより好きになればなるほど、その葛藤が大きくなっていった。

ということで、近所にあるスズキの直営店「スズキワールド」へゆく。夏に、接触事故で被害を受けたフロントフェンダーの交換をこの店でしたので、顔見知りにはなっている。

一度見にいったことがあり、買いたい気持ちがあることは伝えてある。事前に電話で訊くと、訪れる日は私と仲のよい、若い営業の人はいないと言われた。今日は他の店員との交渉になる。まずは、この店でバイクを買うなら、GSRの下取り額はいくらになりますか?である。GSRを整備室に運び、試乗はしなかったが、エンジン吹かしたり、ボディなどを細かくチェックしている。私が冷やかしでなく、本気で買いに来ていることを知っているのだ。個人的には、買い取るなら試乗もしたほうがいいと思う。走らないと、たとえばきしみ音がするなどがわからない。ただ万が一、お客様のバイクを事故などで壊してしまえば大変なことになるのでしないのだろう。

10~15分ほど経ち、店員が現れ、

「保険が残っているので、それをうちで買い取らせてもらって、(そのうえで)◦◦万円です」

まず自賠責保険やが、私はGSRを買うときに、長く乗るつもりだったので5年、金額はたしか28000円ほどの最長のタイプに加入したのやが、乗ったのは1年と4か月ほどで、結果的に1万円以上、損をしてしまった。大型バイクは制度がまた違うので、乗り換えてもこれは移せない。正解は3年に入ることだった。5年先にどうなってるかなどわからない。私の判断ミスだ。

提示された金額は、妥当だと思った。いや、私が買うかどうかわからない客なら、提示額はこれより1万円かそれ以上に安かったと思う。だから誠意はあった。この誠意が感じられなければ、私のことをバカにしているか、そもそもダメな販売店だということなので、ここでは買わない。スズキワールド船橋、川崎、世田谷南など他にもある。

しかしこの金額では買わない。理由は2つ。高額商品を交渉可能な場で、最初の提示額で買うヤツは大阪にはいない。決算期などの例外を除き、最初の提示でこれが限界です!を出してくる店員はいない。おそらくまだいけるだろう。もうひとつは、私自身がこの金額に納得しなかったからだ。最低1万、上で2万円、額を上げたい。

提示された後、私は無言で天井を見上げていた。すこし間をあける。こちらの本音は、この金額(下取り額)では買わないが、できれば家から最も近いこの店で買いたい。1万円ほど多く下取り額を上げるのは大事やが、そのために他のディーラーを回るのはめんどくさいし、回って額が大きくなる保証もない。したがって私の理想は、『この店で金額をアップしてもらって、ここで買う』だ。ただそれを悟られたら足元を見られる。したがって怒ってないが、ちょっと怖い顔をつくって真剣な雰囲気を存分に出し、

「販売店にもいろいろと事情があるのはわかります。ただぼくも、買うならば高い買い物をすることになるので、この下取り額では買えないです。もっと頑張ってもらえませんか。(ここでバイクの購入金額が入った封筒を出して見せて)頑張ってくれたら、こちらで今日、買います。無理なら他のスズキワールドで買います」

ここまで言って、金額が変わらないならケンカ別れみたいになって、もうこの店には来れないなぁとも思いつつ、店員を見ると、この人怖いと目が言っていた。ケンカ腰ではないが、マジの雰囲気を出す加減は難しいのだった。すると店員は、

「わかりました。改めて査定し直してみます」

と言い、パソコンで在庫状況などを調べだした。5分か10分ほどして、

「◦◦万2000円でどうですか。この2000円は、総支払額が2000円出ているので、それを引いた分です。すみません、これがもう限界です。GSR250の中古が、うち(スズキワールド)だけで〇台あるんです」

12000円のアップである。『これが限界』が事実かどうかはわからない。たぶん、私の考えでは、当初の2万円アップまではいけると思う。ただし、今回の提示額は、満足はできないが納得はいく。そして中古の在庫数が〇台もあるのかどうか、それが本当かわからないが、ダブついているのは事実だ。世田谷南店でもそう言っていた。いいバイクなのやが、発売から3年以上経ち、中古車が出回る時期なので、在庫がダブついている以上、高値で買い取るのは厳しい。

さすがにこれ以上の交渉を東京でやれば相手が不快になる。私はまた間をおいて、その間に考えを巡らした。

「××について、どう思いますか。感想を教えてください」

「いいバイクだと思います。GSX-S1000ほどの(扱いにくいほどの)強力なパワーはないぶん、運転はしやすく、(S1000よりは)燃費もいい。この前、店の者が××で浜松まで高速を走ったのですが、燃費が30㎞/Lだったと言うので驚いたんです。よいバイクですよ」

次のセリフを言うのはさすがに私も緊張する。

「わかりました。では、買います」

f:id:suzaku-umenoya:20170101210805j:plain

ということで、契約をした。人生で何十台ものバイクは買えないので、非常に貴重な経験であり、おもしろい時間だった。その後は書類を作り、何度もハンコを押し、前金を払い、諸々の説明を受ける。買いますと伝えてから、緊張が抜けてどっと疲れを感じた。本気の交渉は疲れる。GSR250の状態について訊いてみると、

「非常にきれいに乗られています。エントリーバイクなので、洗車せずにそのまま乗られている人もいますから」

「納車まで1週間ほどかかり、日にちが決まれば連絡します」

前回に店に行ったとき、営業の人に、もしバイクを買えば、納車までGSRに乗っていていいのかと訊くと、その間はGSRをそのまま乗ってください、ただロングツーリングには行かないでください、と言われた。

最後の場面で名刺を出され、

「私、店長の〇です」

! 店長だったのか。いい意味で若くみえるから店長だとは思わなかった。あとでHPをみると、店長だと書いてある。店のHPも見ずに買いに行ってる。

1時間半ほどで、交渉と契約後のやりとりを終える。いやー、むっちゃ楽しかったな。またこんな体験をしてみたいが、しょっちゅう買い替えるわけにはいかないのが残念。ということで、新しいバイクの納車がたのしみだ。しかしそれは同時に、GSR250とのお別れでもある。

 

GSR750日記

GSR123 の検索結果 - Toita blog